2013年2月12日火曜日

やさしさだけでまかり通れる時代ではない

みなさん、こんにちは。ATSUSEAのヴォーカルATSUSHIです。


 ある雨上がりの夕暮れ。冬の訪れに合わせて日は日に日に短くなり、18時を過ぎると景色はすっかりダークブルーに染まりかけていた。そして一人の若者がN暮里駅でまだ来ぬ電車を待っていた。
 すると、隣の男が話し掛けてくる。

「キタSエキ、トマリマスカ?」

 発音、発声の仕方、そして外見より、この話かけてきた男が海外から来日してきたのだと若者は判断した(どこの国かまではわからないものの)。
 突然話し掛けられ、戸惑いながらも、

「止まります」

 と、シンプルに答える若者。これは若者が決して冷たい心の持ち主だからの答えではない。あれこれ余計な説明するよりもシンプルな答え方をした方が分かりやすいだろうという思慮深い考えからの答えである。
 どれだけの時が流れたのだろう、待ち望んでいた電車は暗がりの方角より明かりを照らしながら到着する。乗り込む乗客たち。
 北S駅はN暮里駅より、M島、南S、北Sと3つ目の駅である。

(そこまで教えてやればよかったか…)

 若者はそう思いながらもその男を少し離れたところより見守る。
 電車は南S駅に止まる。
 すると、思いもかけないことが起こった。なんと話し掛けてきた男が電車を降りたのだ!
 若者は考える、北S駅と南S駅。同じS駅なので勘違いしておりてしまったのかと。
 
(どうする…)

 若者は悩んだ。たかだか一度会った人にそこまで親切にする必要はあるのか?もしかしたら教え方が悪かったか?だが、こちらは止まるか止まらないかを聞かれただけではないか。
 様々な思いが交錯する若者。そして、若者はついに覚悟を決める!

「キタSエキ、ツギ!」

 片言ながらも男に向かって心の思いを猛る若者。
 すると立ち止まり振り返る男。そして微笑みながらこう言う。

「オォ、オシッコ」

 閉まる電車のドア。静まり返る空間。

(やさしさだけでまかり通れる時代ではなくなったなあ・・・)

 そして電車は、何事もなかったように目的地に向かい進んだ。流れ行く外の灯りがいつもよりまぶしく見えた…。




FIN



例え自分が傷ついても、人に優しくできる人間になりたいですね。

それではまた(^o^)/